約 2,592,574 件
https://w.atwiki.jp/mobamura/pages/53.html
おしん◆fUpFbllyLM ◆sHOKOHazzo ◆SHIKI/py3c 2016/11〜(148648〜) 代表RP 「ねこです ねこはいます ねこがおおかみです よろしくおねがいします」 16年より参加しているプレイヤーで現時点で690の戦績を誇る。 初参戦から高い参加率であったが最近は参加が減っており感想戦チャットで観戦している事が多い。 村が15人などあと1欲しい時によく入村する。 理論派だが穴も多い。 RPは040-JPか越智にゃんか星輝子の時が多い。 活躍村紹介 ~ 【モバマス】No One Escapes村 ~ 150341番地 人狼 共有共有狼狐の最終日を作り狐を吊って生存勝ち。共有は前日夜会話でどちらもおしん狼で見ていたのを二人とも意見翻させた。 ~ 【モバマス】からくりを組み立てる村 ~ 150975番地 狩人 真狼の信用勝負、最終日決め打ちの直前に生き残っていた狩人がGJを出して詰ませる大仕事。 ~ 【モバマス】不自然淘汰の原則村 ~ 152704番地 猫又 最終日直後の夜に噛まれた伝説の猫 大の苦手役職は妖狐で43戦で0勝。念願の初勝利を手にしたい。 一方、背徳者は2戦1勝1分の勝率100%
https://w.atwiki.jp/mbmr/pages/229.html
魔改造!劇的ビフォーアフター ◆RVPB6Jwg7w ……薄暗い廊下の片隅、すり切れたベンチの上に、彼女は1人座っていた。 遊園地の華やかさから隔絶されたような、裏方のスタッフ用のエリアの一角。 彼らの休憩スペースだったのか、廊下の壁際につけられたベンチの傍には、吸い殻満載の灰皿も置かれている。 等間隔に並ぶ扉のいくつかは開いたままで、ここからでも部屋の中が少しだけ見える。 着ぐるみの頭が転がっていたり、パレードの時にでも使うのか派手な衣装が大量に並んでいたり。 「たのしい遊園地」を演出するのに必須な、しかし来場客にはとても見せられないような、遊園地の「はらわた」。 ここは、そんな場所だった。 ホコリっぽく、すえたタバコの匂いがかすかに鼻につく、静かな廊下。 頭上には、ときおり間をおいて明滅する、切れかけた蛍光灯。 今をときめくアイドルには不似合いな、そんな空間で。 輿水幸子は、ただぼんやりと1人、見るともなく床に視線を向けたまま、座り込んでいた。 そう。 幸子は、1人きりだった。 およそ表情というものは全て抜け落ちて、その口は中途半端に開いたままで。 涙さえも、枯れ果てて。 自信も、強がりも、オーラもなく。 ただ、糸の切れた操り人形のように、壁に背を預けてそこにいる。 刀傷を受けた胸部には、裂けた服の下に真白い包帯が覗き、ほんの僅かな血の色をにじませている。 水本ゆかりの襲撃を受け、神崎蘭子を置き去りに逃げ出してしまった後―― 打ちひしがれる輿水幸子と星輝子の2人は、それでも最後の理性と気力を振り絞り、手近な建物へと避難していた。 引き返して蘭子を助けに行くだけの勇気はない。 どうしようもない形で、その現実を突きつけられてしまった。 けれども、だからといって道の真ん中で立ち尽くしてもいられない。 いずれ襲撃者が追い付いて、2人の命も刈り取ってしまうことだろう。 だから2人は声もないまま、気まずい沈黙のまま、それでもなんとか立ち上がって、重い足を引きずって歩きだして、 そして――見てしまった。 いや、見えてしまった。 ……遠くからでも赤く染まっているのが分かってしまう、 不自然に大きく揺れ続けている、観覧車の、ゴンドラが、見えて――しまった。 それは2人の少女の、臆病と、保身と、決断の遅れと、現実逃避の果てに起きた、大罪の証明。 その光景に崩れ落ちる幸子を、あわてて支え、肩を貸し、引きずるようにしてココまで連れてきたのは、星輝子だった。 幸子の服を脱がせ、不器用に応急処置を施し、また元通りに着せ直したのも、輝子。 今いる廊下に繋がる扉がいくつか開きっぱなしになっているのも、彼女が救急箱を探し回って歩いた痕跡だった。 そんな輝子も、少し前にお手洗いに行くと言って離れてから、戻ってはこない。 ただ用を足すだけにしては長すぎる不在。 ……見捨てられた、かな。 幸子はぼんやりと考える。 無理もないな、と思いつつ、そのことに対して自嘲の笑みさえも浮かばない。 残酷な現実に、強いショックを受けたのは輝子も同じであったろう。 脅威に立ち向かうだけの勇気が持てなかったのも、同じだ。 むしろ幸子以上に蘭子のことを気にかけていた彼女のこと、受けたショックはより大きかったに違いない。 それでも、輝子はギリギリのところで動けた。崩れ落ちなかった。 それも輝子1人ではなく、幸子を引きずって避難し、傷の手当までして。 そこまでしてもらっても感謝の言葉1つ言えない幸子は……だから、見捨てられても仕方ない。そんな風に思う。 まったくもって、普段の幸子らしからぬ弱気さだった。 似たような2人、どうしてこうも差がついたのだろうか。 薄暗い廊下の片隅で、青空から隔離された空間で、幸子は一人、考えるともなく考える。 いや――果たして、本当に「似ていた」のだろうか? 「似ていた」と言ってしまって、いいのだろうか? 輿水幸子は……逃げ続けてきた。 負け続けてきた。 ほんとうは負け続けて、でも負け惜しみを口にし、言い訳で誤魔化して、敗北からも目を背け続けてきた。 それでも、何とかなってきた。 何とか、なってしまっていた。 なまじ、外見も頭脳も音感も、さりげなく高いスペックを秘めているだけに。 なまじ、才能にも育ちにも幸運にも、こっそり恵まれていただけに。 なまじ、腕のいいプロデューサーに巡り合い、絶妙のサポートを受けてきただけに。 逆説的に、「ほんとうに追い込まれたこと」がなかった。 ほんとうに逃げ場なんてない状況を、ほんとうに覚悟を決めるべき状況を、知らずに過ごしてきた。 なにせ、彼女のこれまでの人生で「最大の危機」が、ライブのための「スカイダイビング」なのだ。 確かに怖かっただろう。危険もあっただろう。 パラシュートが引っ掛かって宙吊りになるなんてトラブルも、実はただ笑ってもいられない深刻な事故ではある。 彼女のプロデューサーでなくとも、大いに褒めるに値する奮闘ではあった。 けれど――結局。 輿水幸子の人生経験なんて、所詮は、その程度だ。 スカイダイビングの件だって、幸子が強がりすら言えないほどに怖がっていたのなら、中止になっていただろう。 なんだかんだで彼女のプロデューサーは、そのあたりの見極めが上手い。 またギリギリで中止となった時の挽回策も、きっと並行して用意してあったはず。 逆に言えば、フォローの余地も逃亡の余地もない仕事は、そもそも受けないように立ち回るのが基本だったのだ。 負け続け、逃げ続け、そのついでに、小器用に成功と栄光を掠め取るだけの、基本的に『イージーモード』な人生。 ひるがえって――今ここにいない、星輝子はどうか。 つきあいの浅い幸子にもわかる。幸子にも断言できてしまう。 星輝子は、不器用な少女だ。 キノコへの偏愛だとか、ボサボサの髪だとか、そういう表層的な所で済まないレベルで、深刻な欠陥を抱えている。 根本的なところで、他者とのコミュニケーションに必要な「なにか」が欠損してしまっているタイプの人間。 だが、そういう能力こそ、アイドルとして世を渡っていくのに必須とも言える能力であるはずだ。 才能の面でも、アイドルとしては及第点なのかもしれないが、目を引くほど突出したものでもないのだろう。 彼女のライブを見たことはないが、超一流の表現者が隠し切れずまとう「オーラ」のような凄みは、感じられない。 着ていた服ひとつとっても、生地は安物・縫製も適当。洗い古して襟もヨレヨレ。 いくら私服とはいえ、いつどこでファンやマスコミに見られるか分からない現役アイドルの姿としてひどすぎる―― そして、その自覚すらない。そのことを恥じる素振りすらない。 必然的に、星輝子の育った環境、経済状況のほどが想像できてしまう……。 おそらくは――アイドルどころか、ただ生きるだけでも『ハードモード』と呼んでよいほどの、星輝子の人生。 彼女のプロデューサーが何を考えて彼女をスカウトしたのか、輿水幸子には見当もつかない。 けれど、星輝子のアイドル生活が順調なもので無かったことは、容易に想像がつく。 きっと敗北続きだったはずだ。 勝利や栄光からは縁遠い道を歩んできたはずだ。 そもそも同じ業界で仕事をしていたというのに、幸子は輝子の噂さえロクに聞いたことが無かったのだ。 ――そして、それでも地道に、諦めずにここまで歩み続けていたのだ。 敗北にさえも慣れてしまった、中途半端なアイドル2人。 一瞬、勝手に「似た者同士」と思ってしまったのは、きっとその部分。 しかし、そんな2人の敗北の内実は、大きく異なる。 同じ光景を目にした2人のうち、1人が崩れて1人が耐えきれたのは、きっとその違い。 輿水幸子はある意味において、頭のいい少女である――それこそ、本人のうぬぼれ以上に。 その才能は残酷にも、この殺し合いの極限状態において、長年目をそらしてきた真実に彼女自身を導いてしまっていた。 そう。 このイベントが始まってからの、わずか数時間分だけではない。 彼女の人生にも等しいほどの、十数年分のもの時間こそが…… 十数年分の「ツケ」こそが、今の彼女にのしかかる重みと疲労感の、正体だった。 「ボクは……もう、疲れましたよ……」 振り払って再び立ち上がるには、あまりに重すぎる重荷。 破滅への誘惑が、彼女の全身に絡みつく。 比較的見つかりにくい奥まった場所に入ったとはいえ、いつまでもこうしていられるとは思わない。 きっと遠からず、水本ゆかりは猟犬のように居場所を嗅ぎ付け、その凶刃を振りかざすのだろう。 1度目は皮一枚斬られただけで済んだが、あんな幸運が何度も起きるとは思えない。 あるいは、あの殺人者が気まぐれに見逃してくれたとしても…… このイベントに課せられた残酷なルールは、身動きしないものを長く生かしてはおかない。 遠からず立ち入り禁止の指定がなされ、そして、立ち上がる力もない輿水幸子の、かわいい頭部が宙を舞うのだろう。 そして幸子は、それでもいいかな、と思って、やっぱり自嘲の笑みすらうまく浮かべることができなかった。 あれからどれくらい経ったのだろう。 ほんの僅かな時間なのかもしれないし、数時間ほども経ったのかもしれない。 時間の感覚すらあいまいで、この窓のない空間には日差すら差さず、もはや時計を確認する気すら起きはしない。 ――そんな時間の止まった薄暗い廊下に、やがて聞こえてくる硬い足音。 水本ゆかりか、それともほかの誰かか。 それが彼女の知る星輝子でないことは、足音で分かる。 友好的な未知の人物なら、まずは動かない幸子に驚き、声をかけてくるのが筋だろう。 大きくなっていく足音に重なる、じゃらり、と謎の金属音。 無言の接近が、幸子の甘美な絶望を静かに高めていく。 思い出したかのように、切れかけた蛍光灯がまばたきをする。 『その人物』はそして、幸子の正面、至近距離に黙って立つと―― じゃらんッ! ひときわ耳障りな金属音を響かせて、一呼吸で幸子の首に「鎖」を巻き付けて……力づくで幸子を引き起こすっ! 「…………え?」 もはや何ものにも反応しないのだろう、と自分でも思い込んでいた幸子の口から、ほうけたような声が漏れる。 暴力的に無理やりに顔を上げさせられて、『その人物』の顔を至近距離で突きつけられて―― 幸子の思考が、停止する。 そんな幸子に対し、『その人物』は、楽しそうに、実に楽しそうに。 絶叫した。 「…………フヒヒヒフハハハアーッハッハァッ! まったく見損なったぜェ、輿水幸子ォ!! ここらで軽く死んどくかァ!? ヒャーッハァ!!」 ======================================= 閑散とした遊園地を、ウェディングドレス風の衣装をまとった水本ゆかりは、1人歩いていた。 華やかな装飾の園内ではあるが、しかしこの手の施設につきものの歓声も、さりげないBGMもなく…… 青空の下、だだっ広い通路はただ寂しさしか感じさせない 自動制御によるものか、定期的に無人のジェットコースターが発進し、頭上高くを巡るレールを疾走していく音が響く。 夜間は大人しくしていたアトラクションたちも、「営業時間」を迎え、おのおの勝手に「仕事」をしているようだった。 「なかなか見つからないものですね……」 大きく園内を一周してきた格好のゆかりは溜息をつく。 あの後、逃げた2人を追って動き出した彼女は、しかし、最初の分岐路で選ぶ道を間違えたのだろうか。 動物園になっているあたりに向かい、人がいた様々な痕跡を見つけ、すわ獲物は近いとぬか喜びしたものだったが。 どうもそれは、あの3人が「ゆかりと遭遇する前に」残した痕跡であったらしい。 動物園の裏手のシャワー室まで踏み込んでみても、人っ子1人いなかった。 そうしてこの、動物園と遊園地が一体化したような複合遊技施設を、ほぼ一周してきた彼女は。 入り口・兼・出口の門の近く、大きなメリーゴーランドが見えるあたりに辿り着いていた。 ここも自動で制御されているのか、警告のブザーがひとしきり鳴った後、ゆっくりと木馬たちが回りだす。 キラキラと光る照明、高らかに流れ出す楽しげな音楽。 いかにも遊園地、といった舞台装置を横目に、ゆかりは周囲の建物を見回す。 来場者を迎え入れる、玄関口近く。 そこには当然、券売所がある。案内所がある。迷子や落し物を扱う窓口がある。売店もある。 そして、それらに付随して広がる、裏方のスタッフたちのための建物がある。 大雑把に園内を回ってきた彼女だが、あと探していないのはこのあたりくらいのもの。 ここを一通り調べても見つからないようなら、園外に逃げ出してしまったと見ていいだろう。 「既に逃げていたなら無駄になってしまいますけど……でも、ここまで来たら着実に調べ尽くすべきですよね」 建物の方に歩を進めながら、ゆかりはひとり小さく頷いた。 水本ゆかりは、努力の人である。 世間知らずのお嬢様のようにみられることも多い彼女ではあるが…… なかなかどうして、地味に汗をかくことの価値を理解している人間だ。 特技のフルートにしたって、幼い頃から重ねた練習と勉強の賜物。 絶対音感という強力な武器を持っていても、けっして慢心することなくレッスンを重ね。 芸風を広げる上で必要と思えば、演劇などの新しいことにも進んで挑戦する。 それも、一足跳びに結果を求めるのではなく、着実で王道な努力の上で。 焦らず地道にコツコツと。それが成果につながる最良の方法なのだと、信じているのだ。 「この『イベント』だって、きっとそう……コツコツと、1つずつ成果を積み重ねていけば、きっと……!」 それが、逃がした獲物がいても彼女のスタンスが乱れない理由。 ちゃんと結果は出している。「学習」も重ねている。細かい失敗は沢山あるけれど、1つずつ修正していけばいい。 それはあの見晴台での襲撃でも、観覧車前での襲撃でも。 ブレることなき、水本ゆかりの軸であった。 「そして、普段から積み重ねてきたものに乏しいから……いざという時、はしたない姿を晒すのです。 笑顔1つ維持することも、その場に踏み止まることも、できないのです」 脳裏に浮かぶのは、滑稽なほどに取り乱していた、犠牲者たち。 友情もプライドも人間性も全て放り出して逃げ去っていく、少女たちの背中。 辛い時でも悲しい時でも、笑ってみせる。 そんな『アイドル』の基本中の基本、一番最初に誰もが習う基礎ですら、投げ捨ててしまった者たち。 日々積み重ねていくことを怠り、そしてそのことに反省すらしない者たち。 その程度の連中を斬るに当たって、痛む良心など残ってはいない。 せいぜい、自分が前に進むための「踏み台」になってもらおう――! メリーゴーランドの奏でる軽快な音楽が終了し、規定の一連の動作を終えた木馬たちがゆっくりと止まる。 どこかから、ぶしゅーっ、と機械のつく大きな溜息が聞こえる。 再び静寂を取り戻した、だだっ広い屋外空間に――じゃらんっ! 「――ッ!!」 鎖のような金属音が響くのと、水本ゆかりが振り返るのと、腰の刀に手を伸ばすのがほぼ同時。 第三者からの襲撃や、逃げた2人のヤケクソな反撃も想定していたゆかりは、何があっても驚かない―― ――驚かない、はずだったのに。 「え……ちょっ、だ――誰?!」 「ハッピーナイトメア、ウッェディ~ングッ!! ベニテング! ニセクロハツ! ドクササコ! ツキヨタケッ! 地獄の使者がァ! 血塗れ花嫁にィ! 悪夢のプレゼントをお届けだぜェ!! フヒヒヒ、フハハハ、ヒャーッハッハ……げほ、ごほごほっ」 振り返った先にいたのは――哄笑の途中で、不恰好にむせ返っている怪人物は。 髪の幾筋かを、色鮮やかに染め上げ。 どぎついメイクの上から、顔面に大きく派手な原色のペイントを施し。 鋲やスパイクの目立つ、攻撃的なファッションに身を包み。 見るからに禍々しい印象の『鎖鎌』を両手で構えた―― ヘビメタ、あるいはパンク、とでも表現したくなるような(?)、ド派手な姿の少女だった。 ======================================= 「輿水幸子は……始末した……! 次はお前だァ! 水本ゆかりィ! ヒャッハァ!」 「まさか……あなた、星、輝子さん!?」 狂笑を上げ、威嚇するように鎖分銅を振り回し始めた怪人の登場に、ゆかりは動揺しつつも刀を構える。 口調こそ激変しているものの。見た目こそ激変しているものの。間違いない…… 声といい、体格といい、間違いない。 先ほど観覧車の前で出会った、 輿水幸子の後ろに、半ば隠れるようにしていた、 ともすれば見落としそうになるほど印象の薄い、あの少女だった。 ゆかりとて、彼女のことをそれほど知っている訳ではない。 プロフィール上の年齢が自分と同じだったので、辛うじて記憶の片隅に名前が残っていた……その程度の相手だ。 先の出会いにおいても、ゆかりは彼女の名前を呼んですらいない。 しかし、それでも。 「少し見ないうちに、ずいぶんと変わられましたね」 「ツキヨタケは……置いてきた……フフ……!」 「方針を変更――いいえ、違いますね。 おそらく、こちらが本性。これまでの擬態を、脱ぎ捨てただけ。 きっと、そういうことなのでしょうね」 噛み合わない会話を交わしながら、油断なく身構えながら、ゆかりは自らの認識を修正する。 逃げる獲物の背中を討つだけの、ラクな戦いのイメージを振り払う。 舌なめずりせんばかりの表情で構えられた、鋭い鎌。 唸りを上げて回転を続ける、分銅つきの鎖。 傲岸不遜に放たれる、純然たる殺気。 あまりにも馴染んで見えてしまう、そのメイク、その衣装。 そして先ほどの、「輿水幸子は始末した」という発言。 ゆかりは確信する。 星輝子は――豹変したこの星輝子は、ヤる気だ。 本気で、自分の、水本ゆかりの命を奪いに来ている。 羊の毛皮を脱ぎ捨て、その手を鮮血に染め上げ、アイドル同士本気の殺し合いのステージに、上がってきている。 「驚きました……でも、素晴らしいです。 あなたは今の方が、よほど、『アイドルらしい』」 じりじりと距離を測りながら、思わず笑みが零れる。 あと数歩ほど飛び込めば互いの武器が届く、この状況。 メリーゴーランドの騒音に紛れ、この間合いに入り込まれてしまったこと自体が、失策ではある。 できればここまで近づかれる前に、銃を撃ち放って終わらせたかった。 なんとか刀を抜くのは間に合ったが、今から武器を持ち替えているだけの余裕はないだろう。 理想とは程遠い、厳しい現実を前に――それでも、ゆかりは楽しくって仕方がない。 だって、 「だって、あなた……『笑ってる』」 水本ゆかりの定めた『アイドルの定義』そのままに――山頂で少女たちに向けて断じた言葉、そのままに。 星輝子は、笑っていた。 一点の曇りもなく、あけっぴろげに笑っていた。 本当の命のやり取りを今から始めようというのに、笑っていた。 そしてゆかりは、そんな星輝子を肯定的に認めた上で。 これまでこの島で出会ったあらゆるアイドルたちの中、最高位の尊敬を捧げた上で。 「敬意は抱きますが……それでも。 ライバルとして、あなたには、ここで終わって貰います!」 「ヒャハッ……キノコパワー、全開だぜぇぇぇぇ!」 青空の下、高らかに警告のブザーが鳴り響く。 無人のメリーゴーランドが、定められたプログラムに従って再び動きだす予告の叫び。 その音に背を押されるようにして、2人は共に、それぞれの武器を振り上げ突進する! 「マイタケきくらげエリンギなめこホゥワイトマッシュル~~ムっ、ぶっなしっめじィっ!」 「着実に、確実に……はぁっ!」 じゃららんっ! ひゅんっ! ラップのような絶叫と共に振り下ろされた分銅鎖が、身を捻ったゆかりのすぐそばを通り過ぎていく。 不十分な体勢から突き出された刀が、のけぞる輝子の髪をかすめてその数本を宙に舞わせる。 どちらも素人同士。もしも本職が見たら、あきれるであろう無様な攻撃と回避。 しかし、そこに込められた殺気は、互いに本物。 場違いなほどに軽快な音楽が流れる中、背後で機械仕掛けの馬たちが跳ね回る中、2人の影が交差する。 分銅が舞い、鎖が鳴り響き、白刃がきらめき、そして。 ガキィッ! 全身で飛び込むようにして振るわれた星輝子の鎌の刃が、水本ゆかりの刀の根本近くで受け止められる。 ゆかりの整った顔に触れるまであと数ミリ、というところで鋭い切っ先が止められる。 さすがに一筋の脂汗が額を伝うが、それでもゆかりは笑みを深くする。 ギリギリと鍔迫り合いのような恰好で、押し返していく。 「素晴らしい思い切りの良さですが……少しっ、筋トレが足りてないんじゃないですかっ!?」 「フハッ……『トモダチ』の力を借りれば……百人力…………あっ、ちょっ、待ってっ、」 片手で鎌を、片手で鎖を扱う鎖鎌の戦闘スタイル。 いくら素人同士とはいえ、両手でしっかり構えた日本刀相手に押し勝てるものではない―― ましてや上げ底ブーツで補ってみても、元々の体格に頭1つ分ほども差があれば。 みるみるうちに均衡は崩され、そして、 「……ヒャッハァ!」 「…………ッ!!」 押し負ける、と見た星輝子は、あっさり鍔迫り合いを諦めると、奇声を上げつつ後方へと跳ぶ! そのまま華麗にバク転1つ、ギリギリの所でゆかりの振り下ろした刃を回避し―― 「び、ビックリした……じ、人生初めての、宙がえり成功……フハハハ………………あっ」 「…………」 こてんっ、と。 哄笑を上げようとした星輝子は、しかし、バク転の勢いを殺しきれずに、そのままその場に尻餅をついた。 思わず動きを止める両者。 メリーゴーランドの奏でる、不快なまでに陽気な音楽が、変わらず2人の間に流れ続ける。 そしてそこから、ゆっくりとゆかりを見上げた輝子の顔には―― 派手なメイクとペイントの、その下には。 もはや、素のままの呆然とした表情しか、残っていなかった。 さっきまでの狂ったような『笑顔』は、ゆかりが賞賛したあの見事な『笑顔』は。 たった一度の失態で、綺麗に消え去っていた。 ======================================= 変わらなければならない。 そう思ったのだ。 強引な手段を取ってでも、自分は変わらなければならない。 その方法を思いついたのは、手当のために救急箱を探している最中のこと。 パレードやイベントの時にでも使うのか、様々な目立つ衣装が並んでいた暗い一室。 そこに、まるでそれが運命であったかのように、その服は彼女を待っていた。 それはかつて、夢に見たことがあるような、衣装。 それはかつて、クリスマスのイベントで披露し、プロデューサーに「やりすぎだ」と怒られた、あの時のような衣装。 (一部では、あの時の印象の強烈さに「そういう風な芸風一本槍の」アイドルだと思われているようだが……) ともあれ、あちこちのバンドを少し調整すれば、小柄な彼女にも無理なく着ることができるサイズ。 少し探せばメイクの道具も見つかったし、髪の一部を染めるためのヘアスプレーだって見つかった。 全てのお膳立ては、綺麗に揃っていたのだ。 あと足りなかったのは、彼女の覚悟1つ。 自分を追い込み、最後のハードルを飛び越えるためには、生半可な手段では足りなかった。 だから彼女は―― 星輝子は、輿水幸子に、あんな、あんなにも「思い切ったこと」を。 「……どうやら、私の買い被りだったようですね。あなたには、本当に失望しました」 「あ…………」 尻餅をついた星輝子の頭上から、冷たい声が浴びせられる。 見下ろす水本ゆかりの視線も、声と同様、すっかり冷え切っている。 おそらく……見抜かれてしまったのだ。 星輝子の、必死の演技を。 なりふり構わない、必死の虚勢を。ドーピングのような、短時間水増しのハイテンションっぷりを。 「ち、違……その……!」 「見事な変わり身でしたけれど…… すっかり騙されてしまいましたけれど――それを徹底できないのなら、意味などありません」 不機嫌そうな表情を浮かべ、水本ゆかりは悠然と刀を収めてみせる。 輝子は、しかし動けない。 攻めるべき好機、体勢を立て直す絶好の機会に――すばやく立ち上がることすら、できない。 そして、そんな仮面の剥がれ落ちてしまった格好の輝子に、ゆかりは。 「一瞬尊敬してしまって、損しました。あなたは特に、ゴミのように、確実に死んでください」 背負っていた銃を、トミーガンを、先ほどは持ち替える隙もないと思っていた兵器を、しっかり構えて、 数発の銃声が、響いた。 「あ……え……?」 「ちぃっ……!」 死を覚悟した輝子の口から、驚きの呻きが上がる。 瞬時に身を翻したゆかりの口から、お嬢様らしからぬ舌打ちが上がる。 そして―― 2人の視線の先には。 銃声が放たれた、その方向には。 遠目にも大きく震えているのがはっきりとわかってしまう、 そしてなぜか小脇にキノコが満載の植木鉢を抱えた――第三の、人物。 「さ……幸子っ!? なんでっ!?」 「こ、こ、こんな所で、ぼ、ボクの『ファン』に勝手に死なれても、こ、困るんですよっ!! てててて、手間をかけさせないで下さいっ!」 そう、メリーゴーランドの音楽を掻き消すように叫んだのは。 涙目で拳銃を構える、輿水幸子だった。 やけっぱちで放たれた数発の弾丸は明後日の方向に飛んでいき、ゆかりにはかすりすらせず。 ゆかりの手には見るからに凶悪な短機関銃。 輝子は尻餅をついた姿勢のまま、とっさには戦力になりそうにない。 それでも――そんな危険な状況だというのに安全圏から飛び出してきた、この乱入者に、ゆかりは。 「なるほど……輿水さんを『始末した』、というのも『嘘』でしたか。 とことん、舐められているようですね。 私が見逃して立ち去る展開でも、期待していましたか?」 「……ッ!」 「でもいいでしょう。ここで出てきてくれたのは、手間が省けました。 どっちにしろ……全員殺すんですからッ!!」 「ま、待ってっ! 幸子はっ!!」 ゆかりは輝子の叫びを無視して、楽しげに笑うと――銃口を幸子の方に向けて、乱射する! 「ヒィッ! うわ、ひや、ひゃぁっ!?」 幸子は無様な悲鳴を上げながら、転がるように逃げ回る。 メリーゴーランドの影に、とっさに飛び込む。 それでも『シカゴタイプライター』とも呼ばれたトミーガンの軽快な発射音は途絶えない。 木馬が次々と打ち砕かれていく。 ペガサスが、ユニコーンが、カボチャの馬車が。 回り続ける舞台の動きに合わせて次々と登場し、次々と砕かれていく。 「し、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ~~!! ヒィッ! ひ、ヒィッ!!」 砕かれた木馬の破片が、色とりどりの破片が、次々と降り注ぐ。 必死に身を小さくしてうずくまりながら、幸子は恥も外聞もなく絶叫する。 おもむろに銃声が途絶え、破壊の嵐が止んだ。 木馬の数をだいぶ減らしたメリーゴーランドの音が、何事もなかったかのように耳に戻ってくる。 「……弾切れですか」 ゆかりは溜息をつく。 溜息をついて、まだ数に余裕のある予備の弾倉と交換しようとして――そこで、はっとした。 視界の片隅。 尻餅の姿勢のまま、動けずにいたもう1人。 動きがなくて、呆然としていて、だから僅かに、ほんの僅かに警戒を弱めてしまった相手。 星輝子が、体勢だけはそのままに、しかし、いつの間にやらその手に握られていたのは、鎖鎌ではなく―― 「しまっ――!」 「フヒッ……じ、地獄の劫火に、焼かれやがれーー! ヒャッハーッ!」 右手には、喫煙コーナーに落ちていたのを拾った、100円ライター。 左手には、髪を染める際にも使った、ヘアカラー用のスプレー缶。 それは――誰もが一度は聞いたことのある、危険な火遊び。 火の玉にも見間違うような、爆発的な、一瞬限りの炎が、水本ゆかりに襲い掛かった。 「…………! …………!」 一気に燃え上がる。 声にならない。 水本ゆかりが奪い身に着けていた、ウェディングドレス風のステージ衣装。 フリルが多用され、軽い化学繊維が多用されたその服は、あまりにも容易く燃え上がった。 純白の布地の上を炎の帯が走り抜け、見る間に彼女は、炎に包まれていく。 「…………! …………!」 もはや2人への攻撃どころではない。 自慢の長い髪にまで火が燃え移る。全身くまなく炎に巻かれる。踊りたくもない火踊りを強要される。 バランスを崩して倒れ込み、荷物を振り捨てながらのたうち回る。 穴だらけの木馬たちが駆け回る光景を背景に、水本ゆかりは、ただ独り炎の中に奇妙に踊る。 「なん、で……」 全身の肌を焼かれる痛みに苦しむゆかりの頭上に、小さな影が差す。 トゲだらけの肩当て。威圧的なメイク。そしてそれらとは裏腹に、妙に自信なさげな微笑み。 そんな星輝子の手元には、ゆかりにも見覚えのある、一挺の拳銃。 いましがたゆかりが投げ捨ててしまった、荷物の中に死蔵されていたはずの、コルトガバメント。 あっさり奪われてしまった、自分の武器。 「なんで――わたし、頑張ったのに、地道に、積み上げていったのに――」 「 」 呆然とうめくゆかりに、輝子は銃を向け、何かを呟いて―― その意味を理解するよりも早く、サイレンサーを走り抜けた拳銃弾が、少し間抜けな、決定的な音を立てた。 ======================================= 輿水幸子は、ぼんやりと思い出す。 あの時、あの薄暗い、蛍光灯が明滅する廊下で交わされたやり取りを、ゆっくりと思い返す。 あの時――別人のように変わり果てた、星輝子に吊し上げられた時。 確かにその姿に驚きもしたが、幸子の胸によぎったのは、奇妙な安堵感だった。 ここでキレた輝子が殺し合いに乗ることにしたのなら――幸子を「軽く殺してくれる」というのなら。 もう、これ以上苦しむ必要もない。 もう、これ以上逃げる必要もない。 その刹那に幸子が感じたのは、恐怖よりもはるかに強い、安らぎだった。 「殺すなら……せめてひと思いにお願いします。ボクはもう……疲れました」 強がりの笑みすら浮かばない。どうしようもなく零れた弱音が、埃っぽい天井に吸い込まれる。 鎖鎌の鎖で首を絡めとられ、眼前に鋭い刃を突きつけられ。 それでも幸子には、抵抗する気力すら残っていなかった。 保護したつもりの少女に裏切られて終わるのも、なんだか自分にお似合いの最期のようにも思えた。 けれど。 「フヒヒヒ……! じ、『地獄の使者』が『天使』を連れてって、いったいどーするってんだ! 大体どこに連れてきゃいいんだァ? ゴートゥーヘヴン(天国)? それとも、ゴートゥーヘル(地獄)? どっちだっておかしいだろうが! ね、寝ぼけてんじゃねぇぞ! フハハハハハハッ!」 けれど――そんな幸子の懇願は、鼻先で笑い飛ばされた。 自称『地獄の使者』は、自称『天使』にさらに顔を寄せると、低い声でささやいた。 「徹底しやがれ。 お前は『天使』なんだろ? 『カワイイ』んだろ? なら、いっそのこと、それを徹底しやがれ!」 「……!」 「虚勢でも偽装でもいいじゃねぇか! 笑いたい奴には笑わせときゃいいじゃねぇか! みっともなかろうがミジメだろうが、最後まで貫き通せば、それがお前の真実だ! …………と、わ、私は思う、んだけど…………」 ガクッ。 あまりにもギャップのある、唐突なトーンダウン。 幸子はその場でずっこけそうになって、そして叫んだ。 「あ、あなた自身、そのキャラ徹底できてないじゃないですかっ!! そこで急に尻すぼみにならないで下さいよっ! ホントがっかりですよ、もうっ!」 「と、トークは苦手……フハハッ……!」 「苦手とかそういう問題ですかっ!!」 「こ、これでも頑張った……は、ハイテンションの維持、過去最高記録を更新……フヒヒ」 「何の記録なんですか、何のっ!!」 輝子は奇抜なメイクの下、いつものように笑って見せるが、いったん口を開いた幸子の気持ちは収まらない。 感情が暴走する。見栄を張る余裕もない。虚脱状態からの反動か、言葉を止めることもできずにただぶちまける。 「だいたい、これが『本当の殺し合い』だっていうなら、ですよ! プロデューサーさんも動けない! ボクを崇めるファンもいない! ドッキリじゃないってことは、撮ってるカメラだってない! こんな状況で、誰に、どうやって意地を張れって言うんですか! どこに向けて、どうすれば虚勢を張れるって言うんですか!」 八つ当たりなのは分かっている。輝子にぶつけても仕方がないことくらい分かっている。 頭の良い輿水幸子は、本当は、こんな言葉に意味がないことくらい知っている。 けっして誰も幸せにならない、醜悪なだけの、魂の叫び。 そのはず、だったのに。 「……なら。 私が、『ファン』になる。 幸子にそれが必要なら、私が、いま、ここで、輿水幸子のファンになる」 けっして頭が良いとは言えない、星輝子は。 アウトロー丸出しのファッションそのままで、こんなことを真顔で言い始めるのだ。 かと思うと急に、にへらっ、と脱力しきった笑みを浮かべて、視線を逸らして、こんなことを言うのだ。 「だ、だから…… 私が勝手に、さ、幸子のことを、『トモダチ』だって思うの、許して欲しいかな……なんて……フヒヒ」 じゃらんっ。 もはや言葉もない幸子の首から、するりと鎖がほどかれる。 輝子がゆっくりと、身を離す。 「うん、こ、これで大丈夫……。 これで、最後まで頑張れる……頑張れる、と、いいな……!」 何やら呟きながら輝子が取り出したのは――あの、キノコの鉢植え。 ここまでずっと、肌身離さず持ち歩いていた、あの山盛りのツキヨタケ。 幸子にはその価値がまったく分からない、しかし、大事に思っていることだけは伝わる、輝子の宝物。 「こ、この子たちのこと、お願い……! さ、幸子になら、任せられる……!」 差し出すその手は、滑稽なまでに震えている。 過激で攻撃的なファッションにはまったくそぐわないほどに、震えている。 思わず反射的に受け取ってしまった幸子は、そのまま身を翻す輝子の背中に、慌てて声をかけた。 「な、何をする気なんですか!? どこ行くんですかッ!」 「……き、決まって、る」 輝子は振り返らない。 幸子に背中を向けたまま、再びじゃらり、と支給品の鎖鎌を手にしながら、しかしはっきりと言い切った。 「幸子という、大切な『トモダチ』を守りに。 そして――とうとう『トモダチ』って呼べなかった、蘭子のカタキを」 「…………ッ!」 「そ、そのためにも……む、無理やりテンション上げてくぜー! ヒャッハー! ゴートゥーヘールッ!」 景気づけのつもりか奇声を上げ、鎖を振り回しながら、輝子は駆け出していく。 その背中を見送りながら、幸子はようやくにして、あの奇矯すぎるファッションの真実を知る。 あれは、攻撃的な本性の表れなんかじゃない。 臆病で内気で、他者とのコミュニケーションに多大な困難を抱える少女の…… 思いっきりズレまくった、精一杯の、痛々しいほどの、それでも一歩でも半歩でも前に進むための、覚悟の戦化粧! そして、そこまでの覚悟を見せられて。 いまだ答えなんて出ない幸子も、 いまだ迷い続ける幸子も、 震えながら、涙を目尻に溜めながら、それでもなお、自分の足で立ち上がっていて――! ======================================= 愉快で能天気なBGMが終了し、壊れかけたメリーゴーランドが軋みを上げつつ停止する。 星輝子の足元で、いまだ服の一部が燃え続けている少女が、動きを止める。 「…………」 それを遠くから眺めながら、輿水幸子は、静かに悩む。 あの時、星輝子がなけなしの勇気を振り絞って踏み出した「ほんの一歩」の結末が、この眼前の光景だ。 額に穴を開け、整った顔を中途半端に炎に焙られた、水本ゆかりの屍。 拳銃を片手に飛び出したことは、後悔していない。 あそこで幸子が加勢しなければ、ここで倒れていたのは輝子の方だったろう。 火だるまになったゆかりにトドメの銃弾を撃ち込む行為も、むしろ苦しむ彼女をラクにする、介錯のようなものだ。 これらを責める気には、とてもなれない。 けれど――本当に、これしか方法は無かったのだろうか。 もっと上手いやり方が、どこかにあったんじゃないか。 蘭子も死なずに済む、ゆかりも死なずに済む、そんな、夢みたいな方法が、いつかどこかの時点で。 そんな幸子の迷いをよそに、星輝子は、静かに微笑む。 それは大声で甲高い笑い声を上げていた時の笑顔ではなく。 夜道を静かについてきた時のような、つまり、いままでとまったく変わりないような、そんな笑顔で。 つぅっ、と虚空を見上げると、 『地獄の使者』の姿にはとても不似合いな、祈りの言葉をつぶやくのだ。 「――蘭子。 もう、今更だけど。 こ、こんなことに、意味なんてないって、わ、わかってるけど。 それでも――これで、蘭子のこと、『トモダチ』って呼んで、いいですか――」 輝子の言葉に、答える者はいない。 2人の視線の先、観覧車の血染めのゴンドラは、青空の下。 何事もなかったかのように、静かに回り続ける―― 【水本ゆかり 死亡】 【F-4 遊園地・入場門近く/一日目 午前】 【星輝子】 【装備:鎖鎌、コルトガバメント+サプレッサー(5/7)】 【所持品:基本支給品一式×1、携帯電話、神崎蘭子の情報端末、ヘアスプレー缶、100円ライター、メイク道具セット】 【状態:健康、いわゆる「特訓後」状態】 【思考・行動】 基本方針:トモダチを守る。トモダチを傷つける奴を許さない。 1:守るためなら仕方ない。そして、トモダチのカタキも……! 2:雪美のカタキも、探した上で……!? 3:ネネさんからの連絡を待つ 【輿水幸子】 【装備:グロック26(11/15)、ツキヨタケon鉢植え】 【所持品:基本支給品一式×1、スタミナドリンク(9本)】 【状態:胸から腹にかけて浅い切傷(手当済み)】 【思考・行動】 基本方針:輝子を守りたい、けど…… 1:輝子を守る。でも…… ※水本ゆかりの死体と2人のそばに、マチェット、白鞘の刀、基本支給品一式×2、 シカゴタイプライター(0/50)、予備マガジンx4、 が散らばって落ちています 前:グランギニョルの踊り子たち 投下順に読む 次:スーパードライ・ハイ 前:グランギニョルの踊り子たち 時系列順に読む 次:彼女たちは孤独なハートエイク・アット・スウィート・シックスティーン 前:私はアイドル 輿水幸子 次:彼女たちの心を乾かすXIX(太陽)――ナインティーン 星輝子 水本ゆかり ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/kyokunotamariba/pages/20.html
好きな青属性SRランキング。 選択肢 投票 氷結のドラゴン (13) ビャッコ (0) ラカン (0) タトロン (4) 髑髏魔導師 (1) ラゴエル (2) ネメシス (1) 青雲のドラゴン (0) セイリュウ (0) 青空のドラゴン (1) エイルニル (3) コウリュウ (0) アイスメア (0) パウリガ (0) ルドニック (2) キファト (0) 煽動のドラゴン (0) セルティナ (0) ペンギナス (10) ウェイロス (2) 氷の女王 (0) レヴィアタン (0) ムッカ (2) 好きな森属性SRランキング 選択肢 投票 新緑のドラゴン (0) 荒廃のドラゴン (1) 原初のドラゴン (0) サンダー (1) ケンタウロス (0) 淡紅のタムスグリフ (0) シサイ (0) 巣ごもりドラゴン (1) 笛吹きエルフ (1) イセキノモノリス (8) モッカ (0) 好きな火属性SRランキング 選択肢 投票 屍の剣士 (2) キメラ (1) 紅蓮のドラゴン (0) 天界戦士 (0) 白金のドラゴン (0) 火孔のドラゴン (1) 黒曜のドラゴン (2) マグママジン (1) ビッグレッド (1) サンダーメア (1) ムビオン (1) バドヘッド (0) グリフィン (1) ガブリエ (0) ドラゴンヘッド (1) 炎の女王 (0) ラカエル (0) ラカエル (0) ゴブナイト (1) 最強!最凶!最狂!最恐!URとR+と管理関連ランキング!ばかりですが。 いろいろあってリセット 選択肢 投票 メンテwwwww (5) 新生のモノリス (0) 白龍 (0) ダークドラゴン (1) ソラトカゲ (0) 管理人www (4) ドラゴン系SR (0) イセキノモノリス (1) 以上です
https://w.atwiki.jp/mobamura/pages/94.html
お疲れ様です。楽しく読ませて頂きました。 - 名無しさん (2023-10-27 03 35 31) うみねこ人狼動画でキャッキャしてたあの頃をおもいだすのう(インターネッツ老人)面白い企画でした。お疲れ様です - 名無しさん (2023-10-27 03 20 09) 完走お疲れさまでした。次は15周年村で - 名無しさん (2023-10-27 01 22 00) にのあん・雪風 - 名無しさん (2023-10-16 03 15 05) にのあん、おしん - 名無しさん (2023-10-13 20 08 25) ふぃおら・雪風 - 名無しさん (2023-10-13 10 31 05) おしん、ふぃおら - 名無しさん (2023-10-13 08 56 03) 6日目DSTRが噛まれたところアプサラスになってない? - 名無しさん (2023-10-13 00 22 12) 海星さん - 名無しさん (2023-10-08 15 05 36) でっていう - 唐津 (2023-10-07 19 18 19) キュウさん - 名無しさん (2023-10-06 12 26 35)
https://w.atwiki.jp/yo2low_rate/
このサイトは遊戯王ONLINEにおける低レートで需要の高いカードを載せたものです。 カードリストを見る前に以下の注意事項を必ず読んで下さい。 ※レート表を見る前の注意事項 このサイトのカードリストはあくまで参考程度に留めて下さい。最終的な判断はあなた自身で行って下さい。 カードの需要は新しいカードが実装されたりすることにより変動します。 個人によってカードの価値観は違います。
https://w.atwiki.jp/mbmr/pages/218.html
彼女たちの朝に奏でられるピアノソナタ・サーティーン ◆John.ZZqWo 「す………………ご――――いッ!」 晴れ渡る空、真っ白で大き雲、そして青く透き通りどこまでも続く大海原。 あばら家から出て砂浜まで来た相葉夕美はその光景に思いっきりの歓声をあげた。 「うわぁ……すごく南の海って感じ。すごいなぁ、実際にこんなに綺麗な海を見るのははじめてかも」 寄せる波音も耳に心地よい。相葉夕美は荷物を置きミュールを脱ぎ捨てると、まだひんやりとした砂浜を海に向かって走った。 きゅっと音の鳴る白い砂の上を駆けぬけ、きらきらと光を反射する水の中に素足を踏み入れ、そして―― 「うわ、つめっ……冷たい冷たい!」 悲鳴をあげて取って返した。 この季節、布団を被らずに一晩を過ごしても風邪をひかない程度には暖かいが、日が上ったばかりの海の水はまだまだ冷たい。 「ひゃあ……、さすがに泳ぐってのは無理かもだね。でもこんなに綺麗な海なのにもったいないなぁ」 相葉夕美は未練がましく海を眺めながら荷物を置いた場所へと戻る。 今がオフで観光中というのならばこのまま海を眺めていてもよかったが、しかしそうではないし、彼女にはやることが多かった。 「まずはボートを膨らまそう。そして朝ご飯を食べたらもう一度この島の調査!」 リュックとは別に抱えてきた萎んだゴムボートを相葉夕美は砂浜に広げてゆく。 うんしょうんしょと広げてみれば意外とそれは大きく、意外なおまけもいくつかついていた。 「なんだ、こういうのついてるんだ」 畳まれたゴムボートの中に一緒に入っていたのはまず、小さな空気ポンプ。子供が使うようなものだが、当然と言えば当然の付属品だ。 そして2本のオール。樹脂製で折りたたみ式のものが入っていた。これもついてて当然だろう。なければボートは進まない。 「こっちの小さなバックの中にはなにが入っているのかな」 ファスナーで閉じられたビニールのバックには大きく『救命』と書かれていた。このゴムボートは簡易ながら救命ボートであったらしい。 開くとまず出てきたのが赤い十字印の書かれたプラスチックの救急箱だった。 中には包帯や絆創膏、消毒液、針と糸、ビタミンなどの錠剤、後は胃腸薬や熱さましなどがが少しずつ用意されている。 「サプリはありがたいな。自由な食事ができないと栄養は偏っちゃうもんね。それでこっちは何かな……」 次に出てきたのは簡単な釣具セットだった。先っぽに糸と針がついただけの細い釣竿に、タッパーに入った餌がついている。 餌は扱いやすさが考慮されているのか、つみれ状のなんらかのお肉のようだった。もしかすればいざという時の非常食にもなるかもしれない。 「おー、これで釣りができるねっ!」 そして最後、一番奥に入っていたのはペットボトルに入った水と折りたたまれたライフジャケットだった。 「あ、貴重な真水が増えてラッキー。それと……こっちは海に落ちても溺れないやつだよね。あってよかった」 ペットボトルの水をリュックのほうに移すと、相葉夕美はさっそくオレンジ色のライフジャケットを膨らませて身につけた。 これでなにがどうなったというわけでもないが、なぜかサバイバルに対する自信みたいなものが湧いてくる。 「よし、じゃあ早速ボートを膨らませちゃおう!」 おー! とひとり拳を突き上げると相葉夕美はポンプを萎んだゴムボートに挿してペコペコと踏み始めた。 ■ 「あ、足が…………」 子供用の小さなポンプをペコペコと踏むこと1時間と少し、平べったかったボートは大きく膨らみその存在感をアピールしていた。 全長はおよそ2メートル半といったところで、中で相葉夕美が寝転がったとしても若干の余裕がある。 チューブ径――空気を入れて膨らんでいる部分は35センチで、この大きさならば海に出てもよっぽどでなければひっくり返らないだろう。 立派なボートだと言える。つまり常識的に考えて、およそ子供用の空気ポンプで膨らませるものではない。 「ぜ、絶対いやがらせだ……。でも、よかった。先に確認しておいて……禁止エリアになってからじゃ間に合わなかったよ」 実際に支給した何者かの思惑はさておき、膨らませ終わった相葉夕美はボートの中にごろんと寝転がって息をついた。 床面を通して伝わる砂浜のひんやりとした感覚が気持ちいい。もうこのままお昼まで寝ちゃおうかという誘惑にかられる。 だがその誘惑の手はきゅ~というお腹の音で振り払われた。 「おなかもペコペコだよー……」 相葉夕美はボートから出るとリュックを開いてその中身を砂の上に並べてゆく。 彼女に支給された食料はビニールの袋に入った乾パンと缶詰がみっつ。 それと500ミリリットルの水が入ったペットボルが3本――と、ゴムボートについていた2リットルの水が入ったペットボトルが1本だ。 新しく食料を調達しない限りはこれらだけでこの先の数日をすごさないといけないことになる。 「今は、食べ物を調達できてないから、今朝だけは手をつけちゃおう。でも、どれを食べてどれを残したほうがいいかな」 手に取り食料を詳しく調べてゆく。 まず乾パンだが、嬉しいおまけがついていた。少量だが金平糖が小袋に入って同封されているのだ。サバイバルでは貴重な甘みと糖分である。 「これはルールを決めて食べないといけないね。金平糖は一度の食事で2個だけ食べる。うん決めた」 そして次に缶詰を見る。鈍い銀色の缶に文字だけ書かれた缶詰は大きいものがひとつと小さいものがふたつあった。 大きいほうを手に取って見てみると側面に『とりめし』と書かれている。反対側を見るとお湯で茹でて温めてくださいともあった。 「これは、ご飯だねー。この大きさだったら2食分くらいにはなりそう。それでこっちは……」 小さいほうの缶詰の片方を見ると『コンビーフベジタブル』と書いてある。そのままでもいいが、お湯に溶かすとスープになるらしい。 そしてもう片方を手にとって相葉夕美は怪訝な顔をし、そして『固形燃料』の文字の意味を理解してあっと声をあげた。 「燃料だ! これで火が起こせる!」 最後の缶詰は食料ではなかった。しかしサバイバルにおいてはある意味それ以上に重要な“火”だ。 上蓋を開くと中には平べったい蝋燭のようなものが入っていた。よく料理屋などでお一人様用の鍋を温める時に使うものとよく似ている。 それでこの燃料に火をつけるものは? と探すと、缶の底に油紙に包まれたマッチがくっついてるのが見つかった。 「マッチの数は5本……つまり、5回まではなにかに火をつけられるってことなんだよね」 相葉夕美は想像して考える。もしここで朝ご飯のために固形燃料にマッチを1本使って火をつけたらどうなるか。 缶詰を温め終わると同時に燃料は底をつき、ただマッチだけが4本残されるだろう。 「これ絶対罠だよ。この燃料はそのまま使っちゃいけないんだ。きっと削って少しずつ使うのが正解」 実際にそういう罠だったのかはともかく、相葉夕美はなかなか冴えた発想を見せた。これもサバイバルという極限状態のおかげかもしれない。 「これを火種にするってことはやっぱ燃やすものは自分で調達しないといけないよね。まぁ、予定通りかな」 とりあえず火を起こす際に木で木をこする必要がなくなったと理解すると、相葉夕美は固形燃料の缶に蓋をしてそれをしまう。 そして結局朝ご飯はどうするのか? うんうんとしばらく悩んだ末に彼女は『コンビーフベジタブル』を選んだ。 付属の小さな缶切りを使ってスチール製の缶を開く。けっこう力のいる作業だ。 そしてようやく中身を見てお腹の減っていた相葉夕美は、しかしなんとも微妙な表情をして「あぁ」とため息のような声を漏らした。 「非常食だしね。こんなものこんなもの」 正直、おいしそうな見た目ではない。缶詰一杯の茶色のコンビーフの中にポツポツとグリーンピースやにんじんの欠片が入っているだけだ。 しかもコンビーフの油は白く固まっており、そのままで食べられるとあってもどう考えても温めること前提の一品だった。 燃料を使っちゃおうか。一瞬考えて相葉夕美は首を振る。そんな甘い考えではサバイバルを生き残れない。 決心すると、これも一揃いだけついていた金属製の箸をコンビーフの中に突き刺した。 「しょっぱぁ~い…………」 一口食べて相葉夕美はうぇ~と舌を伸ばす。味の感想はただ「しょっぱい」だけだった。 お湯に溶かすとスープにできますというのも間違いだった。これは元々お湯に溶かしてスープにして食べるものに違いない。 つまり今、相葉夕美はそのスープの素を固まりで食べていることになる。 「でもサバイバルだもんね。我慢するしかないよね。貴重なエネルギー源だし」 相葉夕美としては、元々ある食料はいわゆる自分へのご褒美として存在するものだと思っていた。 自然から調達する食事はきっとおいしくない。だからこそ温存しておくべき食料は逆説的においしいものだと、そんなイメージだった。 しかし現実は非常だ。彼女に支給されたサバイバル用糧食においては栄養が第一、味は第二か第三くらいだった。 相葉夕美はコンビーフを箸でつついて崩しながら少しずつ食べる。味はともかく貴重な塩分と脂分の摂取にはなっている。 そして半分ほど食べたところで彼女は気づき、ペットボトルをひとつ開けて缶の中に水を少し注いだ。 「あ、これなら食べられるや」 あったかくはないので油は溶けず見た目はより悪くなったが、塩辛さは大分抑えられようやく料理らしい味の範疇におさまる。 それがただの気のせいであることに理性が気づく前にと彼女は素早く箸を動かし、そして一日目の朝ご飯を完食した。 「ごちそうさまでした」 ■ 砂浜で朝食をとった後、島の再調査に出るはずであった相葉夕美はしかしまだその砂浜におり、なにか作業をしていた。 「うんしょ、うんしょ…………」 口の中でふた粒の金平糖を転がしながら彼女は缶きりで『コンビーフベジタブル』が入っていた缶の側面を切っている。 斜めに切り口を入れて少しずつ力をこめて切り裂く。缶がスチールなのもあってかなり苦労するが、なんとかそれは完成した。 「さ~ば~い~ば~る、な~い~ふ~♪」 どこかで聞いたような物まねをしながら彼女が手にかまえたのは缶を切り裂いて作った簡易のナイフ……のようなものだった。 作り方は簡単。缶を切り裂いて短冊状にしたら一辺を数回折って背にし、手を切らないように持ち手の部分も折る……だけである。 サバイバルに必要な刃物を作り出す。相葉夕美が最初の食事に缶詰を選んだのはそんな理由もあったのだ。 「切れ味はどうかな……」 近くに落ちていた細い枯れ枝を拾い、できあがったばかりのナイフの刃をあてがう。 缶切りで切り取ったので断面はギザギザだが、むしろノコギリみたいでよく切れそうな印象があった。 「ん……っ! ん……っ! んん~……?」 だがそれは印象だけだった。所詮素人の、しかもありあわせで作った刃物……らしきもの。刃は枯れ枝の表面をただこするばかり。 しかしそれでも格闘すること数分、力をいれるコツを掴むと彼女の小指よりも細い枯れ枝も遂にはポキリと折れ――切れた。 「……ふう。切れ味はカッターナイフくらいかな。ないよりかはましだよね」 なにも切るものは硬いものとは限らない。例えば釣った魚や果実の皮なんかにはこの刃物っぽいものでも十分だろう。 そう納得すると相葉夕美はナイフをリュックにしまい、そのリュックを背負って再調査へと出発した。 本当はこのナイフもどきをブッシュナイフの代わりにして探険家気分を味わうつもりだったがそれはもう永遠の秘密である。 砂浜を出発した相葉夕美が最初に向かったのは、やはりあの睡蓮の花が浮かぶ池だった。 上ってきた太陽が眩しいのか、昨晩あれほど咲き誇っていた花はもうその花びらをほとんど閉じようとしている。 「んー……」 相葉夕美は顎に手を当てて考える。 昨晩は雨水が溜まっているだけの場合もありえると考えたが、水位の上下に敏感な睡蓮が咲いている以上水源がある可能性も高い。 単純にこの池の底から地下水が湧いているだけかもしれないが、それでもと相葉夕美は池の周りを回ってみることにした。 そして半周、ちょうど最初にいた場所の対岸にたどり着いたところで彼女は足元がかなりぬかるんでいることに気づく。 「これはもしかすると……」 池から水があふれているということではない。だとするとこのぬかるみはとても浅い川なのかもしれない。 相葉夕美は地面のぬかるみを頼りにその水源の根元に向かって歩き出した。 「ここまでか」 残念ながら彼女が期待していたような、直接水を取れるような水源はそこになかった。 そこにあったのは、辛うじてそこが水源だとわかる程度の洗面器ほどの大きさの水の溜まったくぼみだけだ。 指を差し込むとあっという間に底の泥が浮かんできてしまう。これではとても飲み水を採取できそうにはなかった。 「これだったらあの池で水を汲んだほうが早いかなぁ。でも蒸留するなら海の水でも同じだし……塩が取れる分お得かも……?」 少し悩んで相葉夕美はリュックから紙の地図を取り出すと、水の湧いている場所に「水:△」と書き込んだ。 そして来た道を戻る。やることは多い。今度は食べられる植物の調査と焚き木になる枯れ木拾いだ。 1時間後、相葉夕美の姿はまたあの砂浜にあった。そしてその両手は空――収穫はゼロである。 「この島、狭すぎるんだよ」 一周しても1キロメートルもない狭い島である。まず調査の対象となる植物の数が少ない。 その中に食べられると判断できるものはなかった。「おいしく」という条件を外しても結局見つからなかった。 もしあばら家の傍に生えていたバレリーナツリーが実をつけていたのならよかったが、しかしそんな時期でもない。 花が咲き乱れる季節とは、つまりまだ実がつく前の季節だということでもある。 そして島の小ささゆえに高い木というのもそうなく、その上で地面のほとんどが湿気を帯びているので枯れ枝も見つからなかった。 むしろそれは砂浜でのほうが見つかるだろう。 とはいえ波で流れ着いて長い時間をかけてできたものだろうから、その数はほんのわずかだろうが。 「気をとりなおして……次の島に行ってみようーっ!」 ないものはしかたがない。これも想定のうちだし、まだお昼までにやっておかないといけないことはある。 できることなら2食続けて支給品の食料に手をつけることはしたくなかった。 相葉夕美は忘れ物がないことを確認すると、リュックをボートの中にのせ、ロープを引っ張ってざぶざぶと海の中へと進んで行った。 ■ 「うぅ……腕がぁ…………」 大海原の上でオールと格闘することおよそ1時間。島の間を渡るという500メートルほどの冒険はようやく終わった。 たかが500メートル。歩けばせいぜい10分から15分だが、ボートを漕ぐとなるとそれは全然違った。 しかもプールや流れに沿うだけの川ならばともかく波の立つ海である。 本日は太陽の眩しい快晴で、風も無風に近く波も比較的穏やかなほうではあったが、それでも小娘一人を翻弄するには十分だった。 「うっく……、ハァハァ…………ちょっと、休憩…………」 なんとかボートを波の届かないところまで引き上げると相葉夕美はそのまま前のめりに砂浜に倒れこむ。 服や髪の毛が砂だらけになってしまうがそんなことにかまう余裕も今はない。 「ライブでもこんなにきつかったことないよ……ハァ」 砂はほどよくあったまっていて心地いい。だけどやっぱりここで寝てしまうわけにもいかないので相葉夕美は身体を起こした。 ぺたりと座り込み、懐から情報端末を取り出す。時間はもう少しで11時だった。どおりで太陽の位置も高いはずである。 「あぁ、放送までに一回りしなくちゃ……」 放送が流れればまた新しい禁止エリアが発表される。 自分が禁止エリアで追いたてられる可能性は少ないと考えたが、ただの思い込みで偶然の可能性もゼロじゃない。 それに一応は最初の島から隣のエリアへと移動はしたのだ。 運営は相葉夕美が実際にボートで移動できるかどうかを確認するまで待っていた――なんて可能性もまた、なくはなかった。 なんにせよ次の放送までには一区切りつけておきたい。 およそ1時間。島中を探索するのは無理なのでせめて外周は回ろうと相葉夕美は重たい身体を引きずって砂浜を歩き出す。 相葉夕美がボートを乗りつけたのは「G-7」にある大きな島の北東の端だったのだが、島の北側は一辺全てが砂浜だった。 なのでとりあえず彼女は砂浜にそって西へ――半時計回りに島を巡ってゆく。 ここも白い砂なのは同じで踏むときゅっきゅと音が鳴って心地よかった。そして前の島とは少し違う点もある。 「こっちのほうが本島に近いからなのかな……」 漂流物が多い。多いと言っても前の島に比べればという話でそう色々流れ着いているわけではないが、それでもあるにはある。 例えば海草の塊だったり、乾いた流木など。これらはこの島と本島の間の海流が速いことを意味してるのかもしれない。 そして自然の中では生まれない、人間がどこかで捨てただろうゴミもいくつか発見できた。 錆だらけの空き缶やビニールの破片、かたっぽだけの足ヒレなど、ほとんどはやっぱりただのゴミだったが、お宝もあった。 「これとこれはは使えそうかなっ!」 ひとつは透明なビニール傘だ。フレームはところどころ錆びているがビニールはどこも破れていない。まだ十分に使える。 もうひとつはブリキのバケツである。どこかで誰かが花火でもしたのかもしれない。これも穴も開いておらず使用に耐えそうだ。 「やっぱり移住するならこっちの島かなぁ~♪」 ふふっと笑って相葉夕美は砂浜を歩く。片手にビニール傘、片手にブリキのバケツ。少し滑稽な姿だったが本人は楽しそうだった。 砂浜を辿って西端まで着くとそこから先は岩場になっていた。相葉夕美は足を滑らせないよう注意して歩く。 ふらふらと腕を振るとバケツの中でガラガラと音がする。中には途中で拾った貝がバケツの半分くらいまで入っていた。 砂浜の端らへんは干潟になっていて、そこで見つけた『アカガイ』である。今日の昼食になる予定だ。 彼女の専門は植物だったが、『アカガイ』が毒をもってないことくらいは知っていた。 「後で釣りもしてみようかなっ! こういうところっていかにも釣れそうな気がするし」 岩場から岸壁を叩く白波を見て相葉夕美はそんなことを言う。波と泡に隠れて海の中は覗けないが確かに魚が潜んでいそうではあった。 ついさきほどまでは疲労に顔をしかめっぱなしだったというのに、いくつか収穫があれば見ての通りに上機嫌。 女の子らしく現金なものだ。しかし、そんな彼女の笑顔もあるものを見るとふっとかき消えた。 「…………………………」 対岸の島になにか細くて高い建物が見える。そこには牧場があったはずだからおそらくは牧草を貯蔵するためのサイロだろうか。 初めて直接目にする、自分とは隔絶された向こう側。あそこで、ほんのすぐ向こう側では自分以外のアイドル同士が殺しあいをしている。 FLOWERSのみんなも殺しあいに怯え、逃げ回るか、それとももう誰かを殺してしまったかもしれない。 そして、それでも絶対に希望を諦めないだろう彼女がこの波で隔てられた向こうにいる。 「……仕方ないよ。だってみんなは助からないんだもん」 相葉夕美は“向こう側”から視線を振り切ってまた歩き始める。 バケツの中でガランガランと寂しい音がした。 【G-7 大きい方の島/一日目 昼】 【相葉夕美】 【装備:ライフジャケット】 【所持品:基本支給品一式、双眼鏡、ゴムボート、空気ポンプ、オールx2本 支給品の食料(乾パン一袋、金平糖少量、とりめしの缶詰(大)、缶切り、箸、水のボトル500ml.x3本(少量消費)) 固形燃料、マッチ5本、水のボトル2l.x1本、 救命バック(救急箱、包帯、絆創膏、消毒液、針と糸、ビタミンなどサプリメント各種、胃腸薬や熱さましなどの薬) 釣竿、釣り用の餌、自作したナイフっぽいもの、ビニール傘、ブリキのバケツ、アカガイ(たくさん)】 【状態:疲労(大)】 【思考・行動】 基本方針:生き残り、24時間ルールで全員と一緒に死ぬ。万が一最後の一人になって"日常"を手に入れても、"拒否"する。 0:放送までに島を一周。 1:しばらくは今いるあたりを中心に、長期戦を想定した生活環境を整えることに専念。 ※金平糖は一度の食事で2個だけ! ※自分が配置されたことには意図が隠されていると考えています。(ただし興味無し) 前:夢は夜に見ろ 投下順に読む 次:寝ても悪夢、覚めても悪夢 前:哀(愛)世界・ふしぎ発見 時系列順に読む 次:彼女たちの向かう先は死を免れぬフォーティン 前:wholeheartedly 相葉夕美 次:彼女たちは遠き日のトゥエンティースセンチュリーボーイ ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/imasss/pages/1530.html
白坂小梅のラジオ百物語シリーズ 小梅「うん。この番組のメインは……アイドル百物語」 ほたる「このコーナーは、小梅さんが私たちの同業者……アイドルのみなさんの所に取材に行き、怪談を聞かせてもらう、というものです」 1作目:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」 執筆開始日時 2013/04/14 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365945798/ 概要 第一夜 神在月 ~ 第十三夜 管狐 タグ ^モバマス ^白坂小梅 ^白菊ほたる ^鷹富士茄子 まとめサイト プロデューサーさんっ!SSですよ、SS!(第一夜) 2作目:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season2 執筆開始日時 2013/06/03 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370268734/ 概要 第十四夜 落書き ~ 第二十五夜 狐 タグ ^モバマス ^白坂小梅 ^白菊ほたる ^鷹富士茄子 まとめサイト プロデューサーさんっ!SSですよ、SS!(第十四夜) 3作目:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season3 執筆開始日時 2013/08/25 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377432933/ 概要 第二十六夜 百物語 ~ 第三十八夜 桜 タグ ^モバマス ^白坂小梅 ^白菊ほたる ^鷹富士茄子 まとめサイト プロデューサーさんっ!SSですよ、SS!(第二十六夜) 4作目:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season4 執筆開始日時 2013/10/09 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1381326554/ 概要 第三十九夜 妖精の輪 ~ 第五十夜 歌声 タグ ^モバマス ^白坂小梅 ^白菊ほたる ^鷹富士茄子 まとめサイト プロデューサーさんっ!SSですよ、SS!(第三十九夜)
https://w.atwiki.jp/mbmr/pages/295.html
彼女たちはもう思い出のトゥエンティーセブンクラブ ◆John.ZZqWo 「じゃあ、アタシはお姉ちゃんと帰るから、ちひろさんにはよろしくね☆」 「うん、またいっしょにお仕事しようね」 佐々木千枝と揃っての撮影モデルの仕事を終えた城ヶ崎莉嘉は、彼女に手を振り足早にスタジオを後にした。 息を荒げながら階段を上り、廊下をスタッフさんに怒られないギリギリのスピードで早歩きする。 向かう先は同じ建物の中にある別のスタジオだ。そこでは姉の城ヶ崎美嘉が同じく撮影モデルをしていて、互いに仕事が終わった後は食事に行く約束だった。 角を曲がり、その先の休憩スペースに向かうと、そこに仕事を終えた姉の姿が見える。けれど……、 「お姉ちゃん、おつかれー……って、――くんは?」 そこにいるのは姉だけで、もうひとりいるはずだった彼女らのプロデューサーの姿はなかった。 「おつかれ莉嘉。プロデューサーさんはねぇ……、さっきまではいたんだけど、なんか急な打ち合わせが入ったーとかで行っちゃった」 「ええーっ!!」 静かだった休憩スペースに城ヶ崎莉嘉の声が響く。 「だって、今晩は3人でごはん食べるって約束だったでしょー!」 妹はひどい剣幕だったが、しかし姉はというとただ肩をすくめるだけだった。 「でもしかたないじゃない。仕事が入ったって話なんだから」 「しかたなくないよー! それにお姉ちゃんはずっと――くんといっしょだったんでしょ! アタシはずっと今日はひとりだったのにぃ!」 「莉嘉は千枝ちゃんといっしょだったんでしょ?」 「千枝ちゃんは千枝ちゃんだもん。――くんとは違うよ」 城ヶ崎莉嘉はがっくりと肩を落とす。3人での、特に――くんとの食事はとても楽しみにしていたのだ。 普段から学校に休まず通い、門限も6時と決められている彼女にとって、プロデューサーといっしょにいられる時間は少ないし、夕食をいっしょにしたこともない。 だからこそ、今日という特別な、両親が町内会の旅行に出ていて家に誰もいないから姉と外食しなさいという日は千載一遇のチャンスだったのである。 あわよくば、家まで送ってくれた彼をそのままお家に上げて……深夜番組を見ながら夜更かししたり☆……なんてことも考えていたりもした。 「――くん、すぐに戻ってくる?」 「んー……、プロデューサーさんは『今日はごめん。埋め合わせはまた今度する』って言ってた」 「うわぁー……」 城ヶ崎莉嘉は冷たい床の上にヘタりこむ。夢も希望も打ち砕かれ、まさに絶望……という風だった。 そんな彼女をやれやれと姉が腕を引いて立ち上がらせる。 「まぁ、3人でってのはまた今度に期待してさ。今日はふたりで食べにいこう。どっちにしろお母さんたちは家にいないわけだしさ」 「むー……」 「奢ってあげるから」 城ヶ崎美嘉はあやすように微笑みを浮かべる。しかし、逆にそれが城ヶ崎莉嘉の癪に障った。 「子供あつかいしないでよ! アタシだってお仕事して稼いでいるんだから、お金くらい払えるもん!」 「でも、莉嘉はお母さんからお小遣いしかもらってないはずだし、それも“計画”のために貯金してるんでしょ?」 「そ、それは、そーだけどさ……」 「まぁまぁ、今日はアタシに奢られておきなさいって。たまにはお姉ちゃんらしいこともしたいしねー」 言いながら、城ヶ崎美嘉は懐からスマホを取り出す。そんな姿も姉はどこか様になっていた。 「莉嘉は今晩、なに食べたい?」 「どこでもいいよ」 城ヶ崎莉嘉はできるだけつまらなさそうな声を出したが、姉はというとそんなことには気をかけず話を進めていく。 「じゃあ、友達に聞いたオススメの店があるからそこにするねー。クーポンで10%オフだし……と。メチャおいしいって言ってたから、莉嘉も絶対気にいるよ」 絶対に気にいる……んだと、城ヶ崎莉嘉も思った。お姉ちゃんのすることに間違いはほとんどない。なにせ自慢のイけてるお姉ちゃんなのだ。 きっと、お店につくまでの間に今日あったことをおもしろおかしく話してくれて、お店では頼んだ料理を分け合いっこして、あまーいデザートを食べて、 帰り道につく頃にはふたりともにこにこと笑って、そしてゲーセンで最新のプリクラを撮るか、クレーンゲームでぬいぐるみを取ってくれるに違いない。 そんなことが彼女にはありありと想像できたし、それはこれまで何度も繰り返してきたパターンだった。 だからこそ、くやしい。自慢のお姉ちゃんは自分よりも何歩も先を行ってて、追いかけても追いつけなくて、一足早く大人になろうとしている。 プロデューサーとのこともそうだ。彼は妹のことは子供扱いするのに、姉のことは“オンナ”扱いする。 彼の目が時々、お姉ちゃんの胸に釘付けになっているのを城ヶ崎莉嘉は知っていた。 “アレ”は自分にはないもので、城ヶ崎莉嘉はそれを少しズルいと思っていた。 ちょっと生まれた時が違うだけなのに、今プロデューサーはひとりしかいなくて、先に生まれたお姉ちゃんが彼を取ってしまおうとしている。 もっと早く生まれていたら自分にもチャンスがあったかもしれないのに。 もっと、早くに生まれていれば……、 もっと、アイドルになるのがふたりとも遅ければ……、 もし、 お姉ちゃんがいなければ――……。 @ そして、気づけば城ヶ崎莉嘉はひとり見知らぬ空き地の真ん中に立っていた。 ――異常事態。殺しあい。生き残れるのはひとりだけ。殺しあいをしなければ、――くんは、死んじゃう? 暗闇の中で、心の底に溜まった澱が形を持ち、立ち上がろうとしていた。 ――お姉ちゃんがいなくなれば、お姉ちゃんが死んじゃえば、お姉ちゃんを殺してしまえば? 小さな手には重たい拳銃が握られていた。 ――これで撃てば、みんな死ぬ。お姉ちゃんも死ぬ。そうすれば、目の前にあるジャマなものは全部なくなる? ドキ、ドキ、と心臓が痛いくらいに弾む。ひどく気分が悪かった。こんなことを考えられる自分が恐ろしかった。 けれど、引き金を引けば問題が解決してしまう。そんな暴力の魅力。殺しあいという異常事態の後押しがぐいぐいと黒い心を掻き立てる。 もしかすれば、いや、“彼女”の狙いどおりなら城ヶ崎莉嘉は手に握った拳銃で誰かを殺していただろう。 「うぅん…………」 その時、どこからか細いうなり声が聞こえてきた。城ヶ崎莉嘉はとっさに拳銃を後ろ手に隠し、周りを見渡す。 誰かいるのだろうか? しかし真夜中の空き地は暗くて、誰の姿も見当たらない。 「…………うーん」 また、うなり声が聞こえてくる。もう一度、今度はよく目をこらして探してみると、草むらの中に誰かが寝ているのがわかった。 「杏っち……」 そこにいたのは双葉杏だった。 草がちくちくとするのか、むずがるように身体をくねらせうなり声をあげている。その姿はひどく無防備で、彼女らしくもある。 「ぷっ……」 城ヶ崎莉嘉はその邪気のない姿に吹き出すと、恐ろしい拳銃をバックに戻し、彼女を起こすことにした。 @ 「ねぇ莉嘉、そろそろ休憩にしない?」 「まだ十分くらいしか歩いてないじゃん! 杏っち疲れるの早すぎだよー!」 「失礼な。杏は莉嘉の体を心配してるんだよ?」 「そんなこと言って、本当は自分が休みたいだけでしょ!? 駄目だからね!」 杏の手を引いて莉嘉は街灯に照らされた道を前へ前へと進んでいく。 「じゃあ、支給品の確認をするべきだよ! ほら、莉嘉もまだ確認してないよね!?」 びくりと肩がゆれる。どうしようか? 思ったけれど、考える前に言葉が出ていた。 「たしかにまだだけど……もう、杏っちは仕方ないなぁ」 拳銃なんて見せたら気が変わりそうで怖かったけれど、隠し続けるのも無理だし言ってしまったほうが楽だ。 それに、いいかげん、あの手この手で休憩を求めてくる杏に莉嘉も辟易してた。 せめてここで言うことを聞いておけばその後、こっちの言うことを聞いてくれるかも、そんな風に考えて譲歩することにする。 「ねー、ついでに少し仮眠とっていかない? ほら、寝る子は育つって言うよね!」 「ダーメ!」 今までとは逆に先を行きだした杏に手を引かれ、莉嘉は暗く静まった民家のほうへと歩いていく。 意識を失う、その直前に姉を交わした会話を思い出しながら―― 前へ前へ、どこまでもこの先へ……アタシのかっこいい、最高にイけてるお姉ちゃんの背を追って、いつか追い越すために。 @ お姉ちゃんが拾ってくれたタクシーに乗って城ヶ崎莉嘉は姉の(正確にはその友達が)オススメするお店へと向かっていた。 窓の外には夜の街の光が流れている。それは彼女にとって珍しいものだったけれど、この時はまだその輝きも目の中には入ってはこなかった。 「そんなに残念だった?」 「うん…………」 こぼれた声は自分で思っていたよりも弱々しいものだった。 「うわ、本当に残念そう」 「だってぇ……」 城ヶ崎莉嘉にとっては2週間も前から楽しみにしていた夜だったのだ。その間に、したいことの妄想も期待も最大まで膨れ上がってた。 それをあっさりとふいにされ、それでいてなにもかもがいつもどおりに流れていってしまうのは悲しいことだった。 「まぁまぁ落ち込まないでよ。なんだったら、今度お姉ちゃんが莉嘉とプロデューサーのふたりきりのデートをセッティングしてあげるからさ」 「本当に!?」 思いがけない展開、それも一気に二段飛ばしくらいの急展開に城ヶ崎の莉嘉の身体が跳ね上がる。 「うん、マジな話で」 「でも……いいの? お姉ちゃんは、それで」 城ヶ崎美嘉はわざとらしい神妙な顔をすると腕を組んでうんとうなづいた。 「うーん、確かにプロデューサーさんがロリコンの罪で逮捕~なんてなったら困るかなぁ……。でもね――」 彼女は妹を横目に見ながら不敵に微笑む。窓から差し込むネオンの光が当たって、その横顔はドキリとするくらいにかっこよかった。 「なにごともフェアにいきたいじゃん? アタシたち姉妹だし、さ」 城ヶ崎莉嘉はその言葉に、はぅとため息を吐く。 かっこよすぎるお姉ちゃん。城ヶ崎莉嘉にとって、お姉ちゃんはいつもスターであり、憧れであり、手を伸ばして向かう先だった。 ※城ヶ崎莉嘉の不明支給品は「シグアームズ GSR(8/8)、.45ACP弾x24」でした。 前:夕日に照らされ、美しく、哀しく、咲き誇って 投下順に読む 次:No brand girls/パンドラの希望 前:~~さんといっしょ 時系列順に読む 次:ヴィーナスシンドローム 城ヶ崎莉嘉 次:……という夢を見たかったんだ ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/sncollection/pages/29.html
SR 近距離 中距離 遠距離 近距離 タイプ 名前 攻撃 防御 MP 能力 近 ナックルキティ 2244 2941 12 スマッシュ 通常より大きなダメージを与える 近 リューム 1836 3604 12 瀕死時アタックチャージ 瀕死時に攻撃力up 近 ロスト 1972 3417 12 ダブルアタック そのターンに2回攻撃を行う 近 エッジ 2108 3162 12 瀕死時アタックチャージ 瀕死時に攻撃力p 近 ポムニット 2176 3009 12 マヒ狙い 麻痺状態の敵を狙って大ダメージ 近 スバル 1972 3332 12 火事場のバカ力 瀕死時に攻撃力up 近 ウィル 1904 3502 12 マヒ狙い 麻痺状態の敵を狙って大ダメージ 近 ガレアノ 2176 3009 12 バームアップ バトル勝利時にバームを多く奪う 近 ギャレオ 1020 6494 12 かかってこい! 敵を挑発して攻撃を誘う 近 サクロ 2040 3247 12 ダブルアタック そのターンに2回攻撃を行う 近 バルレル 2312 4539 14 なぎ払い 前列の敵全体にダメージを与える 近 アプセット 2448 4301 14 かかってこい! 敵を挑発して攻撃を誘う 近 ハサハ 2856 3706 14 親愛の証 より早く親密度成長する 近 ベクサー 2720 3893 14 鉄壁の構え 攻撃力を犠牲にして防御up 近 聖母プラーマ 2788 3791 14 ステータスキュア 自身の攻撃ターンに状態異常の仲間を治す 近 プラティ 2584 4080 14 かかってこい! 敵を挑発して攻撃を誘う 近 フォルテ 2788 3774 14 なぎ払い 前列の敵全体にダメージを与える 近 フレイムナイト 2652 3978 14 ジップトースト 前列の敵全体にダメージを与える 近 ポム 2380 4420 14 火事場のバカ力 瀕死時に攻撃力up 近 アイジィ 2788 3791 14 かかってこい! 敵を挑発して攻撃を誘う 近 ゴレム(ランチガシャ限定) 1564 2499 10 プロテクト 自身の防御力をup 近 イヌマル(ランチガシャ限定) 1564 2499 10 回避 敵の攻撃を回避する 近 テテ(ランチガシャ限定) 1564 2499 10 反撃 ダメージを受けた時、その一部を相手にも与える 中距離 タイプ 名前 攻撃 防御 MP 能力 中 コーラル 2312 2873 12 親愛の証 より早く親密度成長する 中 ミルサート 2448 2737 12 マヒ回避 麻痺攻撃を回避する 中 リプレ 2584 2584 12 近距離ガード 自身の近距離耐性をup 中 レックス 2856 2363 12 遠距離シールドブレイク 敵遠距離タイプの防御力wn 中 ミレット 2720 2465 12 中距離アタック 中距離耐性がwnした敵を狙って攻撃する 中 エア 2584 2584 12 バームアップ バトル勝利時にバームを多く奪う 中 ペンタ君 2652 2533 12 捨て身の構え 防御力を犠牲にして攻撃p 中 エルジン 2516 2652 12 狙いうち 体力が少ない敵を狙って攻撃する 中 ビーニャ 2788 2414 12 スマッシュ 通常より大きなダメージを与える 中 ノロイ 2584 2584 12 近距離ガード 自身の近距離耐性をup 中 ミリネージ 3060 3434 14 スピードチャージ 自分の速度を上げる 中 フェア 2924 3621 14 遠距離ガード 自身の遠距離耐性をup 中 レシィ 3536 2975 14 中距離スピードチャージ 中距離タイプの速度を上げる 中 リニア 3400 3111 14 遠距離ガードブレイク 敵遠距離耐性をwn 中 アメリア 3128 3349 14 ファイアボム 敵全体にダメージを与える 中 バルレル(正月) 3264 3264 14 真空波 中距離タイプの敵全体にダメージを与える 中 あくり~ん 3332 3179 14 バームアップ バトル勝利時にバームを多く奪う 中 ヴィー 3468 3043 14 バームアップ バトル勝利時にバームを多く奪う 中 クリュウ 3468 3043 14 クリティカル 通常よりかなり大きなダメージを与える 中 ソル 2788 3757 14 クリティカル 通常よりかなり大きなダメージを与える 中 ミューノ 3264 3264 14 遠距離アタックブレイク 遠距離タイプの攻撃力を下げる 中 カサス 3332 3179 14 信愛の証 より早く親密度成長する 中 コマリ 2992 3536 14 マヒ狙い 麻痺状態の敵を狙って大ダメージ 中 テレビー(ランチガシャ限定) 1972 1989 10 スピードチャージプラス 味方全体の速度を上げる 遠距離 タイプ 名前 攻撃 防御 MP 能力 遠 シャオメイ 3060 2176 12 バームアップ バトル勝利時にバームを多く奪う 遠 ベルフラウ 3536 1887 12 マヒ狙い 麻痺状態の敵を狙って大ダメージ 遠 マルルゥ 3400 1972 12 サイレントアタック 敵にダメージを与えた時にしばらくスキルを使えなくする 遠 ミルリーフ 2924 2295 12 親愛の証 より早く親密度成長する 遠 ルチル 3196 2074 12 バームスティール! バトル勝利時にバームをかなり多く奪う 遠 オヤカタ 3196 2074 12 かかってこい! 敵を挑発して攻撃を誘う 遠 シシコマ 3332 2023 12 ダブルアタック そのターンに2回攻撃を行う 遠 リリス 3196 2074 12 遠距離ガード 自身の遠距離耐性をup 遠 キュラー 3468 1921 12 マヒ回避 麻痺攻撃を回避する 遠 コギウス君 4284 2482 14 信頼の力 戦闘不能の仲間が多いほど攻撃力を増す 遠 キール 3672 2907 14 追い打ち 体力が少ない敵を狙って攻撃する 遠 ドライアード 4488 2380 14 親愛の証 より早く親密度成長する 遠 ナツミ 3944 2686 14 サイレントアタック 敵にダメージを与えた時にしばらくスキルを使えなくする 遠 ヤード 4148 2550 14 マヒ狙い 麻痺状態の敵を狙って大ダメージ 遠 ヴァルゼルド 3944 2686 14 対遠距離クリティカル 遠距離タイプを狙って大きなダメージを与える 遠 オーレル 4080 2618 14 遠距離攻撃・風刃 単体に通常より大きなダメージを与える 遠 操り姫マリー 3740 2822 14 サイレントアタック 敵にダメージを与えた時にしばらくスキルを使えなくする 遠 パスゥ 3944 2686 14 追い打ち 体力が少ない敵を狙って攻撃する 遠 ライザー(ランチガシャ限定) 2448 1598 10 ファイアボム 敵全体にダメージを与える 遠 ナガレ(ランチガシャ限定) 2448 1598 10 四連撃 複数回攻撃を行い大きなダメージを与える 遠 ポワソ(ランチガシャ限定) 2448 1598 10 バームスティール バトル勝利時にバームをかなり多く奪う 遠 ローレット 3876 2754 14 -
https://w.atwiki.jp/mbmr/pages/198.html
第一回放送 ◆yX/9K6uV4E 「15人ですかー……まあこんなものですかね」 薄暗い部屋の中で、無数のモニターだけが光っている。 モニターに映しだされるのは、無数の“希望”と“絶望” 千川ちひろはそれを眺めながら、席を立つ。 開始からそろそろ六時間が経ち、もう直ぐ放送の時間だ。 「死んだアイドルも……まあ上々」 千川ちひろは何処か上機嫌そうで。 それが本当に不気味で。 彼女の姿を見ていた一人のオペレーターが怯えるように、ポツンと言葉を漏らす。 「やっぱりアイドル同士で殺し合いをさせるなんて……」 本来、希望の象徴であるアイドル達。 そんな希望同士を殺し合わせる。 なんて―――― 「――――悪趣味とでもいいたいですか?」 「ひっ」 オペレーターの心を代弁するように、ちひろは言葉を紡ぐ。 まるで考えている事なんてお見通しだと言わんばかりに。 ちひろは溜め息をついて、オペレーターに優しく言葉をかけた。 「何度言ったか忘れましたけど……“アイドル同士”じゃないと駄目なんですよ、解かります?」 「は、はい……」 けれど、オペレーターは怯えたままで、後ろにいるちひろに対して振り向く事が出来ない。 ちひろの表情を見ることが、とてもではないが出来る訳が無かった。 「そう……“希望”と“希望”が殺し合わせなければ、ならない」 「希望……」 「例え“絶望”に堕ちたって、本質的には“希望”なんですよ」 「は、はぁ……?」 「だって、彼女達は“アイドル”だから」 また、アイドルという言葉がちひろから紡がれる。 アイドルってなんだろう?とオペレーターは解からなくなってしまう。 この殺し合いから、ずっと問われている問題。 ちひろ自身には解があるようだけど、自分にはさっぱり解からない。 ただ、言えることは今、殺し合いに巻き込まれて女の子達は自分とは違う事だ。 そう、こんなどうしようもない自分と違う、何かがある女の子達なのだろう。 「アイドルもヒロインも……皆……“希望”なんですから」 「希望……」 「だからこそ、だからこそ、殺し合わせなければならない」 「……そうまでする理由ってなんなんですか?」 「それは貴方が知る事じゃないですよ」 そうぴしゃりと言い切ってちひろはオペレーターの下を離れる。 まただ、彼女はいつもこうだ。 アイドル同士が殺しあわなければない、ずっとそう説いている。 けど、そうしないといけない根源的な理由は絶対言わないのだ、誰にでも。 千川ちひろは、そうやって、笑顔を浮かべて、いつもはぐらかす。 まるで、狂気に取り付かれたように、アイドルを殺し合わせる事だけを考えているようで。 もう、人間として壊れているようで。 そう考えると、オペレーターはぞっとしてそれ以上考えないようにする。 藪蛇をつついて、自分まで壊されたら堪らない。 そう思い、眼鏡をかけなおしモニターを見つめる。 もう一分もしないうちに、放送が始まる。 “絶望”……或いは“希望”を届ける放送が。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ はーい、皆さん、お待たせしました! 第一回目の放送です! 皆さん、頑張ってますねー。 アイドルとして、ヒロインとして、精一杯生きてます。 ええ、実に素晴らしいと思います! プロデューサーの為に。 自分自身の為に。 ファンの為に。 そして、“希望”の為に。 流石、アイドルです! ですので、もっと頑張ってくださいね? プロデューサーの為にも。 自分自身の為にも。 ファンの為にも。 “希望”の為にも。 すべては貴方達の選択で、掴み取るんですから。 ……さて、ではお待ちかねの死者発表ですっ! 今回死んでしまった皆さんは…… 今井加奈。 城ヶ崎莉嘉。 佐城雪美。 佐々木千枝。 大槻唯。 櫻井桃華。 脇山珠美。 若林智香。 赤城みりあ。 安部菜々。 本田未央。 新田美波。 多田李衣菜。 木村夏樹。 佐久間まゆ。 以上15名です。 聞き漏らしはないですよね? 流石ヒロインの皆さんです! もう四分の一も減りました。 このペースで頑張ってくださいね。 貴方達は自分の為に、アイドルを殺してるんですから。 さて、次は、禁止エリアの発表です。 8時にE-1 10時に~C-7 はい、此方も聞き逃しはないですよね。 知らずに勝手に入って死ぬなんて、許しませんから。 ので、配った情報端末に今回の発表は、確認できるようにしておきます。 さて、以上で放送は終わりです。 アイドルの皆さん、ヒロインの皆さん。 このまま、頑張ってくださいね。 もっと、もっと頑張ってください。 それが、貴方達のためになるんですから。 では、また6時間後、生きている人達は会いましょうね。 皆さん――――最期まで、生き延びて見せなさい。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ そう、戦って、生き延びなければならない。 もっと頑張らなければならない。 それが、アイドルの為。 それが、プロデューサーの為。 それが、ファンの為。 ひいては――――“希望”の為。 例え、それが、深い深い“絶望”の中での“希望”だとしても。 しかし、それでも――ショーは続けられなくてはいけない。 ショーを止めてはいけない。 【残り45名】 前:彼女たちは袖触れ合うテンパーソン 投下順に読む 次:それなんてエロゲ? 前:彼女たちは袖触れ合うテンパーソン 時系列順に読む 次:それなんてエロゲ? 前:オープニング 千川ちひろ 次:第二回放送 ▲上へ戻る